【おにぎりサミット】鈴木宣弘教授 特別講演『「令和の米騒動」から読み解く、日本の食の基盤は何が揺らいでいるのか』オフィシャルレポート
おにぎりサミットのプログラムの中でも、参加者が強い関心を寄せたのが、東京大学大学院農学生命科学研究科 特任教授・名誉教授であり、『食の属国日本』『令和の米騒動』『もうコメは食えなくなるのか』の著者でもある鈴木宣弘教授による特別講演です。 講演のテーマは、「『令和の米騒動』から読み解く、日本の食の基盤は何が揺らいでいるのか」。現在起きている米不足や価格高騰を、短期的な需給の問題としてではなく、戦後から続く日本の農業政策と国際関係の文脈の中で捉え直す内容となりました。
米騒動は「突然」起きたのではない

鈴木教授はまず、「なぜ今、このような事態に直面しているのか」という問いから講演を始めました。
議論を遡ると、戦後日本における政策に行き着くといいます。米以外の農産物、特に小麦の関税が撤廃されるなど、日本の食にとって輸入は欠かせないものになりました。「その結果、日本の農業は弱体化してしまい、米の消費は減少した。日本の経済成長の影で農業は犠牲にされてきた」と話す鈴木教授。政策のしわ寄せが農業縮小と食料自給率の低下につながってきたという指摘は、多くの参加者にとって改めて考えさせられるものでした。「お金を出せば、世界中から食料を買える時代は終わった」と鈴木教授。世界情勢の不安定化は、日本の食と農業に直接的な影響を及ぼしています。米騒動は偶発的な出来事ではなく、長年積み重なってきた構造の必然的な帰結であることが、講演前半で明確に示されました。
農業にお金を出すということ

続いて鈴木教授は、農業支援をめぐる誤解について言及。日本ではしばしば「農業は補助金漬けだ」と語られますが、それは事実ではないといいます。
「農業は、単に食料を生産する産業ではない。人の命を守り、環境を守り、国土と国境を守る基盤的な産業であり、国民全体で支えるのは世界の常識」と話す鈴木先生。実際、日本の農業所得に対する支援水準は、諸外国と比べても決して高くはありません。現場の状況は深刻です。2024年時点で、日本の農家の平均年齢は69.2歳。日本各地を回る鈴木教授には、「あと10年」ではなく、「あと5年でこの地域から米を作る人がいなくなる」という切実な声も聞こえてくるそう。
「安全でおいしい身近な地域の農産物を支える消費行動は、農家のためだけではない。それは、子どもたちの命と未来を守る行為でもある」と鈴木教授は強調します。
学校給食から広がる、希望の循環
講演後半では、前向きな取り組みとして「学校給食」が紹介されました。全国各地で、地元の安心・安全な農産物を学校給食に取り入れようとする動きが広がっています。鈴木教授によると、産地と連携し、国産のおいしい農産物を適正に買い取り、子どもたちに提供する仕組みやネットワークも着実に育っているとのこと。そこにある努力を重ねる生産者と、それを正しく理解し選択する消費者との関係ーー、本物でつながり、支え合う関係こそが「強い農業」です。
「もっと米を作ってください。出口はつくります」

講演の終盤、鈴木教授は「もっと米を作ってください。その分、出口はつくります」と力強いメッセージを会場に投げかけました。
その出口の象徴として語られたのが、おにぎりです。
「おにぎりは、日本の食文化であり、原風景であり、世代を超えて共有できる存在です。米を作り、結び、食べるという循環を社会全体で支えることができれば、農業と食の未来は必ずつながっていく」と鈴木教授。
「みんなで作り、みんなで食べる。その営みを広げていくことで、国の政策動向に左右されることなく、私たち自身の手で未来を守ることができる。『売れ手よし、買い手よし、世間よし』の視点に立ち、生産者と消費者がしっかりとつながる仕組みを考えていくことが不可欠」。
鈴木教授が最後に話したのは「正義は勝つこともある」という言葉。危機の中にあっても希望を手放さない姿勢を象徴しているようです。





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