【おにぎりサミット】災害時の食に必要なのは“メニュー”ではない日常の延長にある防災と非常時にこそ問われる「食の力」
災害時、食べることは単なる栄養補給ではなく、心と体を支える重要な行為になります。おにぎりサミットでは、おにぎりを切り口に、非常時に実際に役立つ食の工夫と備えについて考えました。
テーマは「災害時の食に必要なのは“メニュー”ではない日常の延長にある防災と非常時にこそ問われる『食の力』」です。
登壇者は株式会社クレハ マーケティング部 海外・企画開発グループリーダー 平岡秀剛さん、東洋アルミエコープロダクツ株式会社 マーケティングユニット コンシューマー用品プロダクトチーム チームリーダー 足立隼人さん、尾西食品株式会社 取締役営業本部長 栗田雅彦さんです。そしてファシリテーターはおにぎり協会代表の中村祐介さんが務めました。
「おにぎり」と防災は“切っても切れない”関係
セッション冒頭、中村さんはおにぎりと防災の関係性を、日付のエピソードとともに紹介しました。
「おにぎりは防災とも密接です。1月17日は『おむすびの日』で、阪神大震災がきっかけで制定されています。おにぎり協会としては『おにぎり=防災食』という文脈で語る機会が多かったのですが、今回はそこから少し先の話をしたい」
そんな問題提起が、この後のトークの地図になっていきます。
クレラップが“防災”になる理由:特別な製品ではなく、使い方の想像力

株式会社クレハ マーケティング部 海外・企画開発グループリーダーの平岡秀剛さんが紹介したのは、いわゆる専用品ではなく、ふだんの製品に「災害時に役立つ」という視点を重ねる取り組みでした。
「2025年8月に『防災クレラップ』という商品を発売しました。今までのクレラップと商品自体は同じですが、におい対策、壁にラップを貼って伝言板にするなど、ラップは防災につながります」
ポイントは、製品そのものを“別物”にしたのではなく、同じ製品にメッセージを付与したことです。これには被災地での実感も背景にあるといいます。「被災地の現場で重宝した、という声をきっかけに多能した商品です。いつものラップをもしもの備えとして防災グッズの1アイテムに入れてもらいたい」と平岡さん。家にある道具の価値を再発見するという考え方の事例といえるでしょう。
アルミホイルは「火に強い」だけではない:熱・におい・電気特性まで
続いて中村さんは「ホイルはなぜいま防災に注力しているんですか」と東洋アルミエコープロダクツ株式会社 マーケティングユニット チームリーダーの足立隼人さんに尋ねます。
足立さんは、アルミホイルが日常やレジャーで使われている理由そのものが、防災時の強みに直結すると説明しました。

「『サンホイル』は今までも様々な場面で使われてきました。おにぎりを包むのはもちろん、パンを焼くとき、キャンプやアウトドアでも使われます。これはアルミホイルが金属であるために火に強いという特性があるからです」。
防災時の利点として、この“金属である”ことで、複数の活用場面があると足立さんは話します。「フライパンに敷ける、火にかけることもできるし、においを防ぐ用途もあります。災害時のオムツなど、においが気になるものにも活用してもらいたいです。また、金属なので電気を通しやすいという特性もあります」と足立さん。乾電池が足りない際にアルミホイルを使い懐中電灯を使用したという非常時の具体例も紹介されました。
「防災のために買う」のではなく、「家にあるものを使える」に変える
「防災クレラップ」と「サンホイル」の活用方法をみてみると、日常品が非常時には防災アイテムとして転用されていることがわかります。
平岡さんが「量販店で話を聞くと、防災コーナーが常時あり、みなさんが常に意識しているのがわかる」と流通現場の変化を話すと、足立さんは「防災のために新しくものを用意するより、ご自宅にあるもので防災に役立ててもらいたい」と続けました。
防災という言葉が特別なものではなく、生活の延長に移りつつあることがわかります。
アルファ米の“起源”と“構造”:水で戻るのは、乾燥の仕方に理由がある
食品の観点から話題を引き取ったのは、尾西食品の取締役営業本部長 栗田雅彦さんです。中村さんはまず、商品が防災から始まったものなのかを尋ねました。

栗田さんは歴史をたどりながら、非常食として普及した転機を示します。
「古くは第二次世界大戦での軍事用、それから登山。非常食として広く使われるのは阪神大震災からです。アルファ米は、炊いたお米を急速に熱風乾燥させることで、デンプンの構造を崩さず乾燥が可能。その性質を活かして、水を吸うと元のご飯に戻るという商品を作っています」
こちらも防災のためと注目されがちですが、用途はそれにとどまっていないと栗田さん。
「インバウンドの土産や海外での利用にも広がっています。炊飯ができない地域でも水で気軽に使えるので、海外でアスリートの方が使ってくれているという事例もあります」
備蓄は「保管」から「運用」へ

三者の話を聞き、「備えとして新たに持つのではなく、日常的に使えるものを非日常でも使える意識が重要ですね」と中村さんが指摘。
平岡さんは「防災リュックに1本入れておいてほしい。5〜10年は問題なく使えるので」とラップを“防災リュックにも入れる”という具体策を提案します。続けて足立さんは、アルミホイルの保管上の注意点を挙げつつ、結果的に“日常で回す”ことが合理的だと示しました。
「アルミホイルは金属なので、湿気が多いところだと腐食や変色が起きることがあります。そこで、普段キッチンで使うもの、レジャーで使うものなど、複数持つのも手です」
そして栗田さんは、アルファ米の“使い慣れ”の重要性を強く訴えました。
「水を入れれば簡単に作れます。でも一回も作ったことがない人は、災害時にあわてて作ろうとしても大変かもしれない。受験勉強の夜食や、買い物に行きたくないときなど、日常の生活に一度取り入れてほしいですね」
このトークセッションでは非常時専用のメニューではなく、日常の道具や食品を非常時に機能させるための理解と習慣が重要だということがわかりました。防災は特別な準備ではなく、日常の延長線上で成立する……登壇者たちの商品への思いがその考え方を裏付けました。
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