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歌手
姿月 あさと
知る
2025.07.02

やわらかさや気配りの心 おにぎりには日本の美しさがつまっている

三角のおにぎりへの憧れ

私にとって「おにぎり」といえば、子どもの頃の運動会を思い出します。
大阪生まれなので、我が家のおにぎりは俵型。母が朝早くから握ってくれた俵型のおにぎりはおいしかったですね。でも幼い頃の私は、三角のおにぎりにちょっとした憧れを抱いていました。テレビや絵本で見かけるのは、たいてい三角のおにぎりなので、ある日、母に「三角のおにぎり作って」とお願いしたんです。そのときは「無理よ」なんて言われてしまいましたが(笑)。

だからでしょうか。自分で三角のおにぎりを握った時のことははっきりと覚えています。宝塚音楽学校に入学し、寮生活を送っていたので、寮のキッチンで三角のかたちにおにぎりを握った時に、ひとつ夢が叶ったような気がしました。

具といえば、昔は梅干し一択だったのに、いつの間にかバリエーションも広がっていますね。いろいろな具がありますが、初めて焼き鮭をマヨネーズで和えた“鮭マヨ”のおにぎりを食べた時は驚きましたね。おにぎりは、私にとって懐かしい出来事を思い出させてくれる存在です。

小さなおにぎりがくれた力

コンサート直前にひと口のおにぎりに力をもらったことも

コンサートの前は、あまり食事をしないようにしているんです。でもあるとき、リハーサルが終わったあとに、どうしても体に力が入らないことがありました。そこでお願いしたのが小さなおにぎりでした。コンサートの直前はお化粧をしているので、口紅が取れてしまわないように、ひと口で食べられるサイズのかわいらしいおにぎりです。食べるとふわっと体の中にエネルギーが戻ってくるのを感じました。ほんのひと口なのに、こんなにも違うのかと驚いたのを覚えています。

おにぎりのおいしいだけじゃない魅力は、やっぱり手で握られているからなんでしょうね。「手のひらから旨味成分が出ている」という話を聞いたことがありますが、本当にその通りだと思います。誰かの手で、心を込めて握られたものには、力が宿るんじゃないでしょうか。

昔から変わらないおにぎりですが、最近は進化もしていて驚きます。このあいだ見かけたのは、海苔ではなく、色とりどりの野菜シートで包まれたおにぎり。まるでアートのようにカラフルで、固定観念がほどけるようでした。私がおにぎりを作るなら、やっぱり定番の梅、昆布、鮭でしょうか。でも、そこに少しだけ野菜も添えて。おにぎり一つでワンプレートになるような、そんな栄養バランスのとれた一品にしてみたいなと思います。ひと口のぬくもりが、体と心にしっかり届く。おにぎりって、やっぱりすごい食べものだなと思うんです。

おにぎりの「お」が好き

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