平安時代のおにぎり「屯食」とは
日本人はいつからおにぎりを食べていたのでしょう。物語として残っている最古のものは平安時代。あの『源氏物語』に登場する「屯食(とんじき)」が、一般的にこちらがおにぎりの原型とされる。
その日の御前のその日の御前の折櫃物、籠物など、 右大弁なむたて承りて仕うまつらせける。屯食、禄の唐櫃どもなど、ところせきまで、春宮の御元服の折にも数まされり。なかなか限りもなくいかめしうなむ。
※『源氏物語』第一帖 桐壺 第三章 第六段 『源氏元服』より原文抜粋
「屯食」は甑で蒸した米、「強飯(こわいい)」を大きく楕円形ににぎったもので、宮中での催しがあるときに御所の宿直(とのい)や下級役人へ与える食べ物であった。その形が鳥の卵にも似ていることから「鳥の子」とも呼ばれていたという。
一方、さらに古い文献としては奈良時代、各国の風土をまとめた風土記のひとつ『常陸風土記』がある。こちらは原本は存在しないが、写本の中に「風俗説云握飯筑波之国(筑波のくにぶりのことばにぎりいい )」という記述がる。これは「地元ではにぎりめしの国と呼んでいた」という意味になる。奈良時代にはすでに、おにぎりが存在した可能性を示している。
参考文献/『物語 食の文化』(北岡正三郎著)『にっぽん「食謎」紀行』(伊丹由宇著)『日本料理語源集』(中村幸平著)『精選版日本国語大辞典』(小学館編)『風土記』(吉野裕訳)『茨城県の歴史』(藻谷義彦、豊崎卓著)